遺言の内容に納得できないー遺留分を請求できます
文責 中村由紀
遺言の内容に納得できないというご相談
相続に関するご相談の中で多いものの一つに、「母(父)が亡くなって、遺言書が見つかったのだが、その遺言書の内容に納得がいかない。」というものがあります。「兄弟の一人が全ての遺産を相続する」という遺言や、「兄弟の一人が土地・家を相続して、残りの兄弟はわずかな預金のみ」という遺言だった場合、「母(父)を一番お世話をしたのは私なのに。」という納得できない気持ちから、ご相談にいらっしゃる方が多いです。そういう場合、遺言書の無効を主張するという方法もありますが、それは、いろいろな証拠を揃える必要があり、かなり難しい方法です。
それに対し、簡便な方法として、一定割合の遺産を主張する遺留分の請求という方法があります。今回のコラムは、遺留分について説明します。
遺留分とは何か
遺留分を簡単に説明しますと、民法では、一定の相続人には、一定割合の遺産を請求できるという権利が民法で定められていて、その一定割合の権利のことを遺留分といいます。遺留分の具体例-相続人が子だけの場合を例に
このように、遺留分の請求は、簡単そうで簡単でないことが多いです。遺言書の内容に納得がいかないとお感じになったら、是非、お気軽に御相談にいらしてください。注意!遺留分が請求できるのは1年以内
注意しなければならないのは、遺留分が請求できるのは、相続が開始されて自分の遺留分を侵害するような相続・贈与・遺贈があったことを知ってから1年以内という期間の制限があることです。1年経過すると、時効によって、遺留分を請求する権利が消滅するのです。遺留分の請求の方法
遺留分の請求の方法は、上記の1年間の期間内に、相手に、遺留分の請求をすればよいだけです。口頭でもいいのですが、1年経過した後に、「そんな請求を受けていないよ」と言われてしまう恐れがあります。したがって、遺留分の請求は、必ず、内容証明郵便で行いましょう。実際には、かなりもめます
内容証明郵便で相手に請求の意思を通知するだけですので、請求自体は簡便ですが、その後、かなりもめることが多いです。まず、請求された相手にしてみると、「理由があって親が私に財産を相続させたのに、その親の遺志を無視するとは、けしからん。」ということで、当然、強く反発します。
さらに、遺留分の算定の基礎となる財産は何かということで、激しく対立します。つまり、上のB男、C子のケースの場合、「どの範囲の財産の6分の1を請求できるのか。」ということです。法律により、遺留分の算定の基礎となる財産には、相続発生時の財産だけではなくて、過去にA子、B男、C子が親からもらった財産も算入されることになっているのです。そこで、「あんたは、5年前に、引っ越し祝いで100万円もらったでしょ!」、「そういうあんたこそ、8年前に、旦那が失業したとかで、50万円を親に援助してもらったでしょ!」という攻撃合戦になり、家庭裁判所の調停や審判で争うことも珍しくありません。